過ぎてゆく季節を穂に染めトラノオは哀なピンクで百万本も
エゾイブキトラノはグレーとピンクを合わせたような、静かなピンクです。小さな花が集まってネコジャラシのような穂を作ります。でもこの花の魅力はやはりその大群落にあります。7月、礼文島の桃岩歩道にはエゾイブキトラノオがいったい何万本咲いているのでしょうか。まるでピンクの花霞のようです。
この哀なピンクに似合わないことが一つ。花穂に鼻を近づけるとムッとするような匂いがします。同じタデ科のソバに似た匂いですが、幸いにも群落の中に立ってもソバ畑のように匂いません。
この花が咲きそろうと少し寂しい気持ちになます。それは早春から始まった花の季節が一段落、秋の花へとバトンタッチしていくからです。
お隣の島の利尻山にも、標高1600メートル付近の急斜面に群落しますが、礼文の桃岩歩道は標高300メートルくらい、だいぶ趣が違います。