春水ドード

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 今ごろ島では雪融け水が勢いを増していることでしょう。流れる水は冷たいですが、目を覚ました大地の血潮のようで、春水の豪快に流れる音を聞くのが私は好きです。まるで滝に打たれるみたいに、体がシャキンとするような気がします。

 さて、今一まだシャキンとしていないのですが、私は治療を中途退学しました。3月17日、またすぐ入院治療を再開するつもりで退院し、検査のため通院していました。しかしその後も血液の値が思わしく回復しないので、これ以上の抗がん剤治療は断念することになりました。私の肝臓も腎臓も敏感に薬物に反応してしまって、このまま続行は難しいそうです。「ではどうやって再発や転移を防ぐのだろう」と不安がむくむくと大きくなっていましたが、今日あたりから気持ちが落ち着いてきました。

 もう病室につながれることもなく、春を諦める必要もないのです。40日間点滴のために入りっぱなしなっていたカテーテルが一昨日外されました。まるで鎖から解き放たれたみたい、お風呂にもザブンと入れます。まずは体力を戻して、仕事も再開して、以前の暮らしに少しずつ戻ります。体の中でいつまた悪い顔した細胞が成長をはじめるかわからないので、検査で時々確認してもらうことになっています。

 ちょっと出遅れましたが、ぼちぼちと、春に挑んでいくことにいたします。


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# by somamin | 2017-04-13 18:06 | 短歌 写真 | Comments(2)

やくそく

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雪が消えるとまず顔を出すのは淡い緑のフキノトウ。その次は紫のエゾエンゴサク、湿原ではミズバショウ、木の花ではヤチハンノキ。キバナノアマナやザゼンソウも続きます。お目覚めの順番はずっと変わることはありません。私は何年たっても、いくつになっても、この雪国の春のエネルギーに太刀打ちできず、心の置き所がないような感情を持てあますのが常でした。

今年は島を離れていますが、スマホには毎日のように、雪の消え具合や、植物の芽生えの様子、渡り鳥の来訪などが、礼文島の夫や友人たちから送られてきます。私がいなくても春は来る。フキノトウは咲く。そんな当たり前のことに心がザワザワするのではないかと想像していました。でも私の身の内は意外に静か、風のない日の湖面のようです。こんな春もあるのかと不思議な気持ちでいます。


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# by somamin | 2017-03-29 23:49 | 短歌 写真 | Comments(0)

愛でて暮らさむ

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写真はオオバナノエンレイソウ、5月の末ごろに咲く花です。この花の白い花弁は清潔感があって制服姿のナースのようだと、いつも思います。入院している病院には決まったナース服はなくて、思い思いの自分で選んだナース服を着ています。チロルテープをあしらったもの、切り替えで一部紺や緑のラインが入ったものなど。髪飾り、ストラップ、名札周りのマスコットなど、一人一人控えめではありますが、自分らしさを表現しています。それらを眺めながら私はこの人はどんな性格なんだろう、私服はどんななんだろうと想像したりします。夜勤明けの朝の看護師さんは化粧が控えめで髪型もシンプル、素のままのご本人が垣間見えたりします。

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# by somamin | 2017-03-16 14:34 | 短歌 写真 | Comments(0)

春の月

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窓側のベッドに移ったその日、窓に大きな月が登ってきました。都会の空なのに意外なほどクリアーな光を放つ月でした。満月のように見えますが、ほんの少し左側の欠けた14夜の月でした。「次の日から欠ける満月より、14番目の月が一番好き」という松任谷由実さんの歌詞を思い出します。サワサワと銀の光を浴びて、元気をいただくといたしましょう。

写真は利尻島から登る月。実は秋の写真です。秋の月光は怖いくらい鋭くて、今の私には春の月光の優しさが嬉しいです。


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# by somamin | 2017-03-13 10:27 | Comments(2)

澄まし顔のガン病棟のカツラたち我日常の風景となる

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最初に抗がん剤打ってから9日たちましたが、まだ私の髪は厚くあります。2週間から3週間で抜け始めると聞きますが、人生初めての体験はどんなものなのでしょうか。治療中の女性たちはケア帽子やウィックの話しに余念がありません。私も院内美容室で試着してみたりしました。きっと夫に言ったら手拭いでもかぶっとけと言われるのかなと思いながら、この際だから今までにやったことない髪形に挑戦しようかなんて思ってます。
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# by somamin | 2017-03-09 16:36 | 短歌 写真 | Comments(8)

旅立ちの若き病友眩くて再会なきことそれが幸い

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調子の良い日は朝、院内をウォーキングしています。いつしか仲間もできて、その中の一人に30代の女性がいました。40日におのぶ放射線治療が終わり、3月3日のひな祭りの日に退院して行きました。この日のためにあつらえた真新しいウィックを付けた姿を見せに来てくれました。弾ける笑顔、命が光を放っているようで、とつても眩しかった。幸多き人生でありますように。
写真は春の日差しにほどけ始めたエゾニワトコの冬芽。

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# by somamin | 2017-03-07 10:02 | 短歌 写真 | Comments(1)

雛の目閑か

病棟の雛の目しずか せめぎ合う命見つめてまた春一つ
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病院内には各所に雛人形が飾られています。閉じ込められた人たちに季節を感じでもらおうという配慮だと思います。そういえは我が家の雛はまだ箱の中。飾る余裕もなく入院してしまいました。娘は社会人となり、私が病気をしてからは、保護者のような目で母を見るようになりました。私には子育ての記憶も合わせて愛おしい雛人形ですが、夫や娘にはそれほどの存在感はないようです。今ごろ押入れの中で今年の出番のないことを憂いていることでしょう。

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# by somamin | 2017-03-02 17:15 | 短歌 写真 | Comments(2)

外はもう光の春

片道の切符を握り島をでる治癒して戻らむコザクラのころ
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今日は口腔外科の診察がありました。抗がん剤治療は口の中がダメージを受けるので事前にケアしておく必要があるそうです。治療室の窓近くには辛夷の木がありました。毛に覆われた大きな花芽ですが、まだ春のスイッチは入っていないようで、固く閉じていました。

窓から見える札幌の街はまだ2月だというのに眩しい陽光が降り注いでいます。でも気温は意外と低いらしく、だまされてはいけないと看護師さんは言っていました。温室暮らしの患者に外気の冷たさはわかりませんが、光だけが一足早く春を告げているのでしょう。春はゆっくり来て欲しいと毎年思います。

写真は2月22日の豊平川です。



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# by somamin | 2017-02-28 15:55 | 短歌 写真 | Comments(0)

ご無沙汰しました

細胞の一つ一つに届けたき祈りのありてラジオ体操
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ブログの更新が途絶えてながくなりました。10月に肺に影が見つかり、1月に手術、これから薬物治療に入ります。今年はフィールドワークはどれくらいできるかわかりませんが、何かを作っていたいという気持ちはウズウズと私の中にあります。治療しながら生きていく、その中で感じたことを短歌にしていきたいと思います。今日からは携帯からのアップのため、今までと形が異なります。これからも今までと同様ご愛読いただけたら幸せです。
写真は札幌の夜明け。病院の窓から撮りました。


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# by somamin | 2017-02-27 16:47 | 短歌 写真 | Comments(4)

返り咲く

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昨日、久しぶりに礼文林道へ行きました。
北西の風が歩くのをためらわせるほど力を増していましたが、気温は案外高くコートを脱ぎました。
林を抜けると草原が開け、淡い紫の花が灯るように咲いていました。
チシマフウロです。この花は本来は6月の花です。
礼文島のチシマフウロは花付きが良く、お花畑を華やかに彩る重要な存在です。
10月の返り花は背丈が小さく、紅葉した葉に花を付けていました。
他に花はなく、花粉を運んでくれる虫もいないので、実を結ぶことは難しいとおもわれます。
チシマフウロの返り咲きはそんなに珍しいことではなく、ほとんど毎年わずかですが見かけます。
他にミヤマキンポウゲ、エゾノハクサンイチゲ、キジムシロなどの春の花が返り花を付けます。
枯れ野にこれらを探すのが、晩秋の山歩きの楽しみでもあります。
か細く健気な営みに触れるたび、実を結ばなくても、きっと返り咲くには訳があるに違いないと想うのです。
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# by somamin | 2016-10-16 14:14 | 短歌 写真 | Comments(0)